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ミステリの祭典

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銀座迷宮クラブ

作家 生島治郎
出版日1981年03月
平均点6.00点
書評数1人

No.1 6点 人並由真
(2021/06/25 19:22登録)
(ネタバレなし)
「私」こと、銀座の高級クラブ「しくらめん」のフロア・マネージャーで35歳の宮路は、恋人と足抜けするホステスを助けたため、制裁を受けて失業した。そんな宮路を拾ったのは、熊本出身のママが経営する小規模なクラブ「ばっかす」(愛称「もっこす」)のオーナー一家だ。「しくらめん」の背後にいる暴力団・飛鳥組に睨まれながら、宮路は「もっこす」でマネージャーとしての業務を始めるが、そんな彼の周囲ではさまざまなトラブルが湧き起こる。

 雑誌「問題小説」に連載された全6編の連作をまとめた、文庫オリジナル(「文庫封切り」と表記)の一冊。

 ホステスの変死や宝石がらみの詐欺など事件性のある主題に接近するエピソードもあるが、基本は銀座の繁華街の一角での日々の変事や謎を題材とする生島版「日常の謎」的なシリーズ。

 一回45分枠の連続・毎回完結形式のTVドラマを楽しむような感覚でサクサク読めるが、随所にいつもの<生島作品らしいハードボイルド感>は込められており、その意味でも安定した面白さ。

 くだんの日常の謎ミステリとしては、第五話の、金持ちの囲い者になったとたん、無駄に多数のペットを飼いまくるホステスの事情などがちょっと印象深い(さる事情から迷惑な目にあう動物たちののことを考えると、いささか不愉快でもあるが)。

 真っ当な謎解きミステリのフォーマットを遵守する必要がない分、各話エピソードが幅広く、話にバラエティ感があるのが強みのシリーズだった。
 外出の際に車中で読んだり、病院の待合室のお供などには、最適な一冊。

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