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ミステリの祭典

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ポルノ殺人事件

作家 黒木曜之助
出版日不明
平均点5.00点
書評数1人

No.1 5点 人並由真
(2021/06/25 05:14登録)
(ネタバレなし)
 翌年の沖縄本土返還を控えた、1971年。9月の東京では、欧米に比べてポルノ産業後進国の日本を鑑みながら、コールガール組織を運営するハーフの青年ジョージが、効率の良い利益の出るポルノ・コンビナートの構想を進めていた。そんななか、人気コールガールで25歳の美女、紺野ユカは意外な相手に再会。同時に自分が処女を失った、女子高校生時代の真実を察する。一方でユカの年下の彼氏の大学生、武本良治もまた、ある奸計を図っていた。さまざまな男女の思惑が入り乱れるなか、とある男女に唐突な死が訪れる。

 現状でAmazonにデータがないが、書籍(たぶん元版しかない)は桃園書房から1971年12月に刊行。書き下ろしで、作者・黒木曜之助のたぶん第六番目の長編。

 キワモノ以外の何物でもない題名に興味を惹かれて、web経由でまあまあの値段で古書を入手。
 黒木作品は大昔に『暗黒潮流』(これは政界を舞台にしたミステリ。詳しい内容は失念)を一冊読んだきりであった。正直、そんなに高い評価は聞かない作家だが、一部にこだわっているらしい愛好家がいるようではある?
 
 ポルノ解禁前の性風俗商売の世界を主題に、さらに沖縄本土返還やら連合赤軍(そのままではないが、類似の組織)やらのネタをからめた当時の昭和風俗ミステリで、謎解き作品としては案の定、大したことはない。
 前半は、半世紀前という意味での時代がかったレトリックの数々で、ケタケタ笑いながら読める。さすがにリーダビリティだけは申し分ない。
 エロい描写が適当に断続したのち、中盤で一応はフーダニットの形をとった殺人事件が発生。ようやくいくらか話が引き締まるかに見えて、後半はちょっと意表を突かれる展開にも及ぶ。
 とはいえ終盤の謎解き? は二転三転するものの、ほとんどサプライズのためのサプライズとして話の穂を継ぎ足して転がしていくような印象で、うーん。ラストの真相というか決着は、ある意味でスゴイね。

 1000円前後出して買ったような気がするが、稀覯本ということを考えなければ、正直ちょっと高い買い物であった。
 まあ古本屋で200円くらいまでで見つかって、気が向いたら買ってもいいんじゃないかと。

 昭和のC級ミステリの猥雑な雰囲気だけは、十分に楽しめるが。

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