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ミステリの祭典

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M8の殺意
曽我明 旧題「連続殺人マグニチュード8」

作家 長井彬
出版日1983年01月
平均点5.00点
書評数1人

No.1 5点 nukkam
(2021/06/17 08:22登録)
(ネタバレなしです) 1983年発表の長編第3作ですがデビュー作の「原子炉の蟹」(1981年)よりも書かれたのは早く、「M8以前」というタイトルで1980年にミステリー賞に応募して受賞を逃したのが原型だそうです。探偵役の曽我明は本書では部長に昇進しており、何となく風格が出たように感じます。地震予知会議のメンバーである教授の周辺で次々と事件が起きるというプロットですが、どこか不自然に感じられるところも真相を知るとなるほどと納得できるように仕組んであって巧妙な作品だと思います。とはいえ動機に関しては微妙で、丁寧に説明してはいますが被害者側の立場にたつとこれで殺人は到底納得できないと思う読者もいるかと思います。社会派推理小説要素が強いですが、一方で不可能としか思えない人間消失が3回もあるなど本格派推理小説も意識しています。なお長井にとって社会派スタイルの作品は本書が最後で、以降はより本格派スタイルの作品が書かれるようになります。

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