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ミステリの祭典

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ヌードのある風景
私立探偵リック・ホルマン

作家 カーター・ブラウン
出版日1969年01月
平均点6.00点
書評数1人

No.1 6点 人並由真
(2021/06/13 15:25登録)
(ネタバレなし)
 「おれ」ことハリウッドの私立探偵リック・ホルマンは、旧友で、盛りの過ぎたトップ・アクション映画スター、クレイ・ローリンスから相談を受ける。初老のローリンスは結婚と離婚を繰り返し、現在の19歳のベビーが5人目の妻だった。彼は最初の妻ソニア・ドレスデンとの間にできた、やはり19歳の実の娘アンジーと先日まで同居していたが、そのアンジーがいかがわしいフーテン画家、ハロルド・ルーミスと同棲し、酒や麻薬に溺れてるらしいので助けてほしいというものだった。ホルマンはあまり気がのらない思いで依頼を受けるが、帰り際に若妻ベビーがそっと、どうも夫が何者かから脅迫されているらしいと打ち明けた。ホルマンはルーミスのアパートに赴き、彼とアンジーに対面。そこでホルマンは、作画の技術そのものはなかなかなのに、わざと露悪的に残虐に肉体を損傷して描かれたルーミスの作品=裸婦像を確認した。ホルマンはルーミスと揉めたのち、何かいわくありげなアンジーの物言いを聞いて、いったん退散する。だがやがて、ルーミスの悪趣味な裸婦像を思わせるような殺人事件が起きた。

 1965年の版権クレジット作品。私立探偵リック・ホルマンシリーズの第11作目(ミステリ・データサイト「aga-search」の登録分類データから)。

 2時間弱で読み終えた、いつものカーター・ブラウンだが、お話そのものは割に面白かった。こんなこというと「はああ?」と問いただされそうだが、連想したのはシムノンのメグレシリーズ。
 なるべくネタバレにならないように言うと、本作はとある主要人物が、ひそかに<人間・悲喜劇>的ないびつな関係を設けて、その事実が波及して、やがて殺人やらなんやらの望ましくない事態に繋がっていくという内容。
 ね、それっぽいでしょ?

 カーター・ブラウンにこういうものがあるのかと軽く驚いたが、考えてみたら大昔に数十冊も読んでるタイトルの内容を今では大半を忘れてるんだから、何があっても不思議じゃないね。この数年読んだ(または再読した)何冊かの作品だって、かなり幅広い主題のプロットだし。

 ルーミスの画家仲間で、ホルマン相手のいやらし担当のブロンド美人ポリー・ブキャナンがなかなか魅力的。ベッドシーンは当時の時代らしい控えめの表現で叙述されるが、そこが却ってエロくて笑える。
 後年、セックス解禁時代にあわせて、あけすけなポルノ志向になってゆく時期のカーター・ブラウン作品って、日本ではまったく未訳のはずだが、実際に読んだらどうなんだろ。それはそれで……な反面、どっか寂しい感じになってしまうような予見がしないでもない。できれば日本語で1~2冊くらい読んでみたいけれど。

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