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ミステリの祭典

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くちぬい

作家 坂東眞砂子
出版日2011年09月
平均点5.00点
書評数1人

No.1 5点 猫サーカス
(2021/06/09 18:34登録)
都会へ出て山村で暮らし始めた夫婦が味わう恐怖の物語。竣亮は定年退職を機に、妻の麻由子と二人で高知の山奥へ移り住むようになった。麻由子は放射能汚染に不安を感じ、東京から逃げたかったのだ。当初は理想の生活を手に入れたと思っていた。ところが高齢者ばかりの村人たちとの関係は次第に嫌悪となっていく。きっかけは「赤線」と呼ばれる道の上に穴窯を作ったことだった。そして夫婦は陰湿な嫌がらせを受け始める。「村」という閉鎖社会での陰湿ないじめや人の心が壊れる過程が不気味に語られていく。だが、それはなにも田舎だけではなく、どこへ逃げようとも付きまとってくるのかもしれない。本作は、まるで日本という国の根源的な病理を示しているかのような恐ろしさを、読者に覚えさせているようだ。

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