食人国旅行記 |
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作家 | マルキ・ド・サド |
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出版日 | 1987年04月 |
平均点 | 5.00点 |
書評数 | 1人 |
No.1 | 5点 | メルカトル | |
(2021/06/07 22:59登録) 許されぬ恋におち、駆け落ちをしてヴェニスにたどりついたサンヴィルとレオノール。二人はこの水の都で離れ離れとなり、互いに求めあって各地をめぐり歩く。―本書ではその波乱に満ちた冒険旅行をサンヴィルが回想するが、なかでも注目すべきはサドのユートピア思想を体現する食人国と美徳の国の登場で、その鮮烈な描写はサド作品中とりわけ異彩を放ち、傑作と称えられている。 『BOOK』データベースより。 これは最早小説の形を借りたサド侯爵の魂の叫びと言っても良いでしょう。不当に投獄された(少なくとも本人はそう思っているはず)サドが獄中で書いた一作品の中の二、三章を纏めたものです。そこには美徳と悪徳の両極のユートピア思想が溢れており、ほぼ1/3程度が法律に関する記述で、牢獄の中の人となった作者の恨み節がひしひしと伝わってきます。だからストーリーらしきものはほとんど無きに等しく、冒険小説の自由闊達な要素も見当たりません。カニバリズムに関しては女ではなく男を解体して、焼いて食するという至ってシンプルなもので、全く過激ではないですね。 サドらしいエログロや残酷描写はなく、異色の作品として扱われているようです。とは言え、私にとっては初物ですので、詳しいことは何も申せません。ただ、いずれ問題作の筆頭と言われている『ソドムの百二十日』と対峙しなければならないとは思います。そこでサドの真髄に触れられたらと勝手に妄想しております。 |