(2021/06/06 23:05登録)
(ネタバレなしです) 街頭写真師ハンサム&ビンゴシリーズ第3作の本格派推理小説として着手されながらクレイグ・ライス(1908-1957)の急死によって未完に終わり、警察小説の巨匠エド・マクベイン(1926-2005)が遺稿を完成させて1958年に出版されました。どこまでがライスの筆によるものなのかわかりませんが、17章でビンゴがある人物に寄せる同情心や19章のファッション描写などはライスらしさを感じさせます。誰もが知っていると言いながら謎に包まれている女優エイプリル・ロビン、生きているのか死んでいるのかわからない行方不明者、複数の名前を持つ人物たちが織り成す複雑な人間関係で読者を翻弄するのもライスらしいですね。ハンサムの驚異的な記憶力も冴え渡っています。しかし伏線の回収もほとんどなく唐突な解決に終わってしまっているのが残念です。他人の未完成品の完成をいきなり頼まれてマクベインがやっつけ仕事になったとしても同情の余地はあると思いますが、短編集「被告人、ウィザーズ&マローン」(1963年)でライスと共作関係だったスチュアート・パーマー(1905-1968)にこの仕事をやってもらっていたらどうなんだろうと思わないでもありません。
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