(2021/06/05 16:26登録)
(ネタバレなしです) 様々な職歴を持つ関口甫四郎(1928-1993)はミステリー作家を目指して歴史本格派推理小説の「北溟の鷹」で1980年にミステリー賞を狙うも失敗し、天童一馬シリーズ短編集である「旅の事件簿」(1984年)を私家版で出版した後に天童一馬シリーズ長編第1作である本書でようやく1987年にプロ作家デビューしました。ちなみに「北溟の鷹」も1991年に単行本出版されています。本書は仲よし四人組のOLの内、1人が死亡(警察は事故死と判断)、2人が失踪するという事件を残りの1人から天童が相談される展開の本格派推理小説です。タイトルに使われている回文の謎解きがとても凝っていて、明確な理由なしに特定の文字だけ除外するとか推理に感心できない部分もありますが非常に考え抜いて構築された暗号だと思います。ただ暗号以外は高く評価しづらいですね。中町信の作風を意識したのでしょうか、プロローグで思わせぶりに「死体を運ぶ男」、「剽窃」、「脅迫者が襲撃」などが示唆されていますが、どんでん返しの連続は凄いと思わせるものの謎解き伏線の回収という点では全く不足しており、中町信に及ばないのが残念です。総合評価では4点ぐらいですが回文暗号の敢闘に1点おまけします。
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