(2021/06/05 16:00登録)
(ネタバレなしです) 1976年発表の本格派推理小説です(後年に「殺意の墓標」と改題されましたが旧題の方がいいと思います)。新潟のおじから赤字でVと書かれただけの手紙を受け取ったと相談された周子はおじを訪問します。ところが入れ違いのようにおじは東京へ出かけてしまい、その後福井の東尋坊で死体となって発見されます。周子は夫と共にアマチュア探偵として犯人探しに乗り出しますが、警察をライバル視して突撃気味の周子を捜査に協力しつつも危険な真似をしないようと諫める夫という図式がなかなか読ませます。仮説に対する矛盾点を指摘し合いながら推理を修正していく丁寧な謎解き議論もよくできています。そして第7章では何と「読者への挑戦状」が用意されていますが、犯人やトリックや動機を見破れというのではなく、「作品の中に書いた透明な2つの『V』を探せ」というクイズです。犯罪の真相については手掛かりは色々ありますが「断片をつなぐ一本の線がないから、バラバラのまま頭の中に浮遊している」状態となって自白で補強しているのが謎解きとしては残念ですね。そして最後の最後に披露されるクイズの解答の方はというと、「こんなの当たるかいっ!」と負け惜しみ言いたいです(笑)。
|