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ミステリの祭典

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夕焼けの少年

作家 加納一朗
出版日1975年11月
平均点5.00点
書評数1人

No.1 5点 人並由真
(2021/05/15 06:01登録)
(ネタバレなし)
 1975年。東京の西南。中学1年生の賀屋登志子は、隣に越してきたフランス帰りという同世代の少年、寺山亘(わたる)と友人になる。そのまま登志子の同級生にもなった亘だが、実は彼と彼の両親には大きな秘密があった。そんななか、登志子たちの同級生で母子家庭の不良少年、小野崎次郎が亘にからんでくるが。

 1975年に初版が刊行された、ソノラマ文庫版で読了。
 最初の元版は同じ朝日ソノラマの叢書「サンヤング」シリーズの一冊で、webでデータを調べるとそちらは1969年7月の初版。「サンヤング」版ではたぶん物語の時勢の設定も、そちらのリアルタイムの1969年だったと思われるが、本の現物を持ってないので正確なことは未確認。

 内容は昭和のジュブナイルらしくシンプルなものだし、寺山一家の正体もここで明かしてもいいような気もするが、一応はネタバレ回避でナイショにしておく。まあ要は活字で読む「少年ドラマシリーズ」(懐かしの)です。

 特殊な設定ゆえに非日常的な能力を秘める亘だが、中盤からストーリーの実質的なメインキャラは、最初は不良だが、やがて心を入れ替えてゆく小野崎次郎の方に移行。彼が結構、長いスパンでのピンチに見舞われたのち、亘とヒロインの登志子が……という大筋になっている。
 くだんの次郎少年の苦闘の連続部分はいかにも昭和の読み物だが、この時代らしい奇妙なパワフルさがあって、なかなかテンションが高い。なんか脚本家の名前で視聴率を稼げた時代の、話題のテレビドラマみたいな味わいだ。 

 かたや寺山一家の持つ特殊な力には、一定の法則性が設定されており、一見、万能そうに見える機動力にもそれなりの制限がかかる。このあたりは、良い意味で定石を踏まえている感じ。

 ただし終盤の勧善懲悪のくだりでは、結構ドラスティックな裁きを悪人に下していて、きわどい方向にも筆を切り替えられる作者の黒さがにじんでいるような。いや、そういう意味では、いま読んでもなかなかショッキングであった。

 お話のクロージングも結末そのものはきわめて王道なんだけど、妙に余韻を感じさせるのは良い。
 ジュブナイルだから一時間ちょっとで読める一冊で、オトナになっている今だからこそ冷えた頭でアレコレ思いながらモノを言うけれど、もしも69~75年のリアルタイムに子供の目線で読んでいたら、けっこう思い入れていたかもしれない、そんな気配もある。

 disる意図は皆無、シンプルかつ正統派の昭和ジュブナイルをホメる意味で、この評点。

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