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ミステリの祭典

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偽憶

作家 平山瑞穂
出版日2010年11月
平均点6.00点
書評数1人

No.1 6点 猫サーカス
(2021/05/13 18:51登録)
初めに結論ありきで事実を都合よく捻じ曲げて記憶する。誰もが知らず知らずにそんな思い込みをしているかもしれない。この作品は、忘れていた過去の真実が暴かれる物語である。疋田利幸は、実家に届いた奇妙な手紙を手にとった。ある人物の遺産問題に絡み、利幸が小学六年生の時に行われたサマーキャンプ参加者五人に集まってほしいという。やがて女性弁護士による説明会が行われた。故人の遺産はなんと31億円。しかし受け取る資格があるのは、15年前の夏に「或ること」をした人だけだという。一体あの夏に誰が何をしたのか...。大手メーカー勤務の利幸、バーの雇われ店長の樹、派遣労働で食いつなぐ一彦、自称タレントの智沙、公益団体に勤める今日子。それぞれの過去が生々しく物語られ、次第に個性の違う彼らの人となりや現在の境遇が明らかになっていく。家族、学校、思春期の悩みなど、痛々しく身に迫るエピソードも多い。話の中盤で真相はおおかた判明するものの、キャラクター設定と描き方がうまく、「同窓会ミステリ」としての読みごたえは十分すぎるほど。5人の相性の良し悪しや遺産に対する執着がそれぞれ異なるため、よりサスペンスが高まっている。「偽憶」にまつわる結末も見事。

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