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ミステリの祭典

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夜がどれほど暗くても

作家 中山七里
出版日2020年03月
平均点7.00点
書評数1人

No.1 7点 HORNET
(2021/05/09 14:04登録)
 「週刊春潮」編集部・副編集長の志賀倫成は、タレントの不倫疑惑記事など、芸能関係のスキャンダルを暴く記事作りを生業としていた。だがある日、離れて暮らしていた大学生の長男が、大学講師の夫婦宅に押し入り、夫婦を殺害して自身も自死。「加害者の親」として一転、世の好奇の目、社会的非難の「的」となる。「本当に息子がそんなことをしたのか―?」信じられない思いにくれる間もなく、世のバッシングにさらされる日々。そんな中、志賀の前に現れたのは、被害者夫婦の一人娘・14歳の奈々美だった。
 「社会正義」を大義名分に、自身の日々の鬱屈をぶつけて留飲を下げる大衆の「悪意」。これまでも氏の作品ではたびたび描かれているが、そうした人間の暗部についての描写説明がことさら上手く腑に落ちる。本作では、加害者の親である志賀と、被害者の娘である奈々美が次第に心を通わせていくのだが、現実にはそんなことは難しいだろうと思うからこそ、物語りとして面白い。
 夫婦殺害事件の真相ももちろん用意されているが、物語全体の主軸は謎解きよりも人間ドラマ。相変わらずぐいぐい読ませる展開で、満足のいく一冊だった。

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