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ミステリの祭典

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烙印の森

作家 大沢在昌
出版日1992年03月
平均点5.00点
書評数1人

No.1 5点 E-BANKER
(2021/04/29 22:19登録)
ノンシリーズ・ハードボイルド。(ノワールかもしれないが・・・)
こういう小説を書かせれば安定感十分! 作者の比較的初期の作品。
ということで単行本は1992年の発表。

~芝浦の人気のない運河沿いに佇むバー「ポッド」。集まるのは裏稼業に携わる者ばかり。元傭兵のマスター、盗聴のプロ、ニューハーフのボディガード、そして私は犯罪現場専門のカメラマン。特に殺人現場に拘るのは、ある目的で伝説の殺し屋”フクロウ”を探し当てるためだ。ある晩、ついに命を狙われ始めた私は裏社会に生きる「ポッド」の連中と手を組むことに。驚愕のラストが待ち受ける!~

作者というと、どうしても新宿、歌舞伎町の薄暗い街角が思い浮かぶ。
しかし、「新宿鮫」の人気シリーズ化以前である本作の舞台は六本木・西麻布界隈。どちらかというと、薄暗いというよりは「きらびやか」な雰囲気。
そのせいなのか、どうもしっくりこないというか、ややうわべ感が強いような気がしてしまう。

伝説の殺し屋「フクロウ」を巡って、決してカタギでない登場人物たちが繰り広げるドラマが本作のテーマ。
主人公の「メジロー」の秘められた過去が明かされる中盤以降、物語はスピードを増し、紹介文でも触れている驚愕のラストへ突入する。
ただ、これが「驚愕」かというと大いに疑問ではある。
全体的に、「新宿鮫」以降に触れてきた人物たちの背負っている「因果」に比べれば、どうにも軽いような気がするな・・・

まっでも、それほど穴のない作品に仕上がっているのは事実。
さすがにまとめ方は若いころから熟知していたのだろう。一定の満足感は得られるはず。
ラストになってタイトル(=烙印)の意味が判明するところも読みどころかな。

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