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ミステリの祭典

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踊る天使

作家 永瀬隼介
出版日2006年05月
平均点5.00点
書評数1人

No.1 5点 猫サーカス
(2021/04/19 18:24登録)
現実に起きた犯罪を取り入れたミステリは少なくない。マスコミで盛んに報道された大事件は、写真や映像などのイメージも残っており、活字の世界がより具体的に迫ってくる。この作品のモデルにしているのは、新宿歌舞伎町の雑居ビル火災。もちろん実際の出来事そのままではなく、小説ならではの物語が展開していく。一九八〇年代後半、いわゆる狂乱のバブル経済が最高潮に達しようとしていた日本における肥大した欲望とその裏で生まれた憎しみが事件に絡んでいる。冒頭、ひとりの消防士の視点でビル火災の模様が描写される。激しく燃えさかる建物を必死で消火しようとする姿は、すさまじいほどの迫力。まずは、この臨場感に圧倒され、先を読まずにおれなくなる。振り返れば異常としか言いようのなかったバブル期の熱気と復讐の憎悪を燃やす者たちをめぐる本作は、まさに熱さを感じる一作。

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