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ミステリの祭典

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スケルトンキー
女王陛下のスパイ!アレックス シリーズ

作家 アンソニー・ホロヴィッツ
出版日2003年06月
平均点7.00点
書評数1人

No.1 7点 Tetchy
(2021/04/14 00:03登録)
シリーズ第3作目の舞台はウィンブルドンからコーンウォール、マイアミにキューバ、そしてロシアへと目まぐるしく移り変わる。巻を重ねるごとにそのスケールも本家007シリーズ並みに大きくなってきているようだ。

さらに今回はスパイ小説でお馴染みの共産圏への潜入任務なのだ。弱冠14歳の少年にとってかなりハードな任務である。

そしてアレックスは今回拷問に掛けられ、敵から執拗な訊問を受ける。
CIAが潜入してきた目的についてコンラッドから問われるが、通常のスパイならば任務のために命を落とすことを選ぶがさすがに14歳のアレックスにそれを求めるのは酷だ。14歳の未熟さゆえに、やりたくもない仕事をやらされている恨みつらみがぶり返し、彼はスパイとしては失格である任務の詳細を嘘偽りなく明かすのだ。
この辺は大人の私から見れば14歳の少年スパイらしい展開だが、少年少女がこのアレックスの行動についてどのように思うかが逆に気になるところだ。

そんなアレックスが挑む相手アレクセイ・サロフの陰謀とはかつてのソ連軍が所有していた原子力潜水艦が無造作に廃棄されているムルマンスクに核爆弾を落として、連鎖爆発を起こさせ、死の灰をロシア、北欧を含むヨーロッパ諸国に降らせ、警鐘を鳴らし、更には現大統領を失脚させ、自らが新生ロシアの大統領となって現在の堕落したロシアを立て直すと云うものだった。
私がこの件を読んで慄然としたのはもしこのサロフが云うムルマンスクに無数の―本書によれば100隻―原子力潜水艦が遺棄されており、最も古い物で40年前―本書の原書刊行時2002年時点―の老朽化した、いつ放射能漏れが起きてもおかしくない潜水艦もあるということだ。
もしこれが本当ならば世界は大変なことになるだろう。そしてそれが真実ならばロシアはチェルノブイリの悲劇から何も学んでいないことになる。
またこれらは冷戦時代の遺物であり、いわば負の遺産だ。そしてこれらをきちんと処分するのが国の務めであり、そして世界の務めであるのだ。
このアレックス・ライダーシリーズはジャンルとしては少年少女向けの読み物だが、本書に含まれた世界の危機は大人たちも是非とも知っておくべき事実であろう。

また第1作ではクォッド・バイクでのチェイス、前作がスキーでの雪山チェイスと本家007風味を盛り込んできたこのシリーズだが本書では出るべくして出た海でのスキューバダイビングでの潜入行、そしてお約束通りのホオジロザメとの格闘とやはり期待を裏切らない展開が待ち受けている。

さて文庫派の私にとって本書がアレックスシリーズ最終作となる。
ただまだまだ助走状態。少年向け007シリーズの域を脱していない本書を以てホロヴィッツの真価を評することはできないだろう。
次からが私のホロヴィッツ本体験となるのは必定。さてどんなミステリマインドを見せてくれるのか、非常に愉しみである。

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