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ミステリの祭典

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あなたの思い出紡ぎます 霧の向こうの裁縫店

作家 高橋由太
出版日2019年12月
平均点7.00点
書評数1人

No.1 7点 メルカトル
(2021/04/08 22:58登録)
この世とあの世を縫い合わせ、死んだ人に一度だけ会える裁縫店。路頭に迷った真琴を雇ってくれたのは、そんな都市伝説のような店だった。偏屈店主と謎の少年幽霊に翻弄されながら、様々な客と関わっていく真琴。事故死した娘に会いにきた母親、病気と闘いながら妻に会いにきた男性、恋人に会いにきた女子高生。彼らと接する中で、真琴もまた客として、ある人に会いにいくことを決意する。
『BOOK』データベースより。

これは非常に完成度の高い作品だと思います。プロローグで主要登場人物を要領よく紹介し、これから起こる物語に期待を持たせるような雰囲気を醸し出します。第一話で大号泣させ、その後も一話ごとに趣向を変えつつ、ワンパターンにならないように読者を飽きさせない工夫を凝らしています。ほんわかとした良い話や切ない話ばかりかと思いきや、第三話では凄く嫌な人物を登場させ、イヤミス的でホラー風味の話に仕上げたりもしています。

そして最終話では、守銭奴で冷たく底の知れない裁縫店の店主自身の過去を抉るように描き、最高の形で物語を締めくくっており、温かい余韻を残しつつ幕を引きます。
何となく続編がありそうな、更にはシリーズ化も期待できる終わり方をしていて、ひっそりとそれを楽しみにしている自分がいました。

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