home

ミステリの祭典

login
統計外事態

作家 芝村裕吏
出版日2021年02月
平均点6.00点
書評数1人

No.1 6点 糸色女少
(2021/04/06 21:31登録)
主人公の数宝数成は猫が心のよりどころ、というか生活の中心になっている独身の四十男。時は2014年、日本は少子高齢化による経済低迷が続き、過疎化やライフライン老朽化も深刻という、希望に乏しい衰退社会になっている。数宝は「安全調査庁」に雇われて在宅で働く統計分析官。ただし外注なので給料はぱっとしない。
不遇だが数学に強い彼は、廃村の水道使用量が不自然に多いことに気付くと、しなくてもいい調査に向かった。そこで彼を待ち受けていたのは、表情を持たない全裸の少女たちに襲撃されるという異常事態だった。
ほうほうの体で逃げ出した数宝だったが、戻ってみると、なぜか巨額の年金運用資金を一瞬にして消滅させた国際的サイバーテロリストに仕立てられている。経歴データも書き換えられていて身の潔白の示しようがない。改竄された経歴データと自分の記憶のズレから陰謀を嗅ぎ取った政府の工作員で大学の後輩の伊藤と共に、謎を解くために、再び廃村へ向かう。
次第に少女の不思議な自意識のありようと高度な知性が判明し、数宝はユニークな推論で真相に近づいていく。データ改竄の真犯人は誰か。少女集団の正体は。そして、人類に未来はどうなるのか。ユーモラスな語り口と猫への愛着に救われるが、物語の底には衝撃的な犯罪も横たわっている。

1レコード表示中です 書評