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ミステリの祭典

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ある殺人の肖像

作家 ジュリアン・シモンズ
出版日1967年01月
平均点4.00点
書評数1人

No.1 4点 人並由真
(2021/04/02 03:07登録)
(ネタバレなし)
 イギリス下院議員の経歴を持ち、現在は出版社「庶民社」の社主であるオッキー・ガイ。彼は自社の定期刊行物「庶民」「今日の犯罪」を通して、さらにテレビなどにも登場する庶民の味方の論客として、一般市民の支持を得ていた。だが盤石に見えた庶民社は実は現状、急いで資産援助をしなければならない状況にあり、そのためにワンマン社長のオッキーは手段を選ばなかった。そんななか、会社の周辺で一人の幹部社員が何者かに刺殺される。

 1962年の英国作品。
 うーん、この数年、手にしてきたシモンズ作品はどれも7点以上、一律に読み応えのある面白いものばかりだったが、これはちょっと。

 物語の舞台となる出版社「庶民社」にからむ群像劇は緻密。そのメイン人物はもちろんオッキーだが、雑誌「今日の犯罪」の編集長で新入社員の女子に亡き妻の面影を見て恋心を抱く青年「ボーイ・カートン」ことチャールス・カートンが副主人公となる。
 しかし丁寧さは感じるものの、ちっともストーリー的にも謎解きミステリ的にもハジけた感じがしなくて凡庸。いったいこの作品は、どこで勝負しようとしたのだ? という感想である。
(住宅難の少女一家をネタに、これ見よがしにイイことをして善人アピールしようとしたオッキーのくだりは、ちょっと風刺がきいていたが。)

 最後の方にちょっとミステリとしてのひねりがあるのはわかるんだけれど、真相を聞かされて、はあ、それで? という思い。たぶん数か月したら、あんまり面白くなかったこと以外、忘れているでしょう(汗)。

 シモンズもヒットばかりではなかったのだな、という感じ。ポケミスの解説も、よくよむとこの作品そのものは実ははっきりとはホメてないね?
 まあ次回からは、いい意味で期待値を下げてシモンズ作品に付き合っていきましょう。 

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