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ミステリの祭典

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撮影現場は止まらせない! 制作部女子・万理の謎解き

作家 藤石波矢
出版日2017年11月
平均点6.00点
書評数1人

No.1 6点 人並由真
(2021/03/30 15:49登録)
(ネタバレなし)
 中堅の映画監督、連城祐基の現場で、製作部のスタッフとして働く「ばんり」こと29歳の佐古田万理。万理の仕事は、映画の撮影作業が潤滑に進むよう製作体制の全般を支援する「制作進行」だ。この仕事について6年めの万理だが、彼女の周囲には連城監督や上司のプロデューサー、春日部ほかもの作りの仕事に強い接点を見出す人々が集う。だがそんな撮影現場では、予期しない事件が。

 映画撮影現場を舞台にした業界もの+「日常の謎」ものの連作中編ミステリ。
 書き下ろしの文庫で、本文全体は230ページほどと短め。全4話のストーリーが語られる。

 基本は人間関係の綾に基軸を置いた謎解きで、ときに苦い主題を扱いながらも後味が悪い話はない。
 
 さらに実際に作者に映画制作に関わった素養があるのか、あるいは取材や考証が充分なのか、映画の撮影や企画制作についてのトリヴィアも楽しく学べる。
(もし何か問題があるとしたら、それは読み取れない評者の方の問題だ。)

 さらに主人公ばんりほか、映画制作に参加する人間たちの心の傾斜ぶりも適宜に抑えられている(単純に「映画が好き」という言葉でまとめない辺り、21世紀の作品として気を使っている)。

 前述の業界もの+日常の謎解きとして、全体的に優等生的な連作ミステリ集。一本読み終えたらすぐまた次に行きたくなるくらいには、楽しかった。

 良い意味で、この手のスタンダードな一冊。 
 シリーズ化はしてほしい反面、あまりマンネリになってもツマランな、という思いも感じる作品でもあった。 

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