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ミステリの祭典

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暗い森の少女

作家 ジョン・ソール
出版日1978年11月
平均点6.00点
書評数1人

No.1 6点 人並由真
(2021/03/28 04:30登録)
(ネタバレなし)
 20世紀の半ば。米国のニューイングランド地方のポートアーベロの町。そこに屋敷を構えるコンジャー家は、一世紀以上の歴史を誇る土地の名家だった。だが屋敷と海岸の間には小規模な森があり、うっそうとした茂みにはコンジャー家の醜聞といえる惨劇の伝承がのこされていた。そして1年前に、コンジャー家の現当主ジャックの次女セーラが行方不明になっていた。そのセーラは外傷も性的暴行の痕跡もなく発見されたが、彼女の精神は半ば外界から閉ざされていた。そして今また、ポートアーベロでは一人の少女が姿を消して……。

 アメリカの1977年作品。
 キングやクーンツに次ぐ米国ホラー界の人気作家(F・P・ウィルソンあたりと同ランクか)で、日本でもそれなりの作品が翻訳紹介されているジョン・ソールの処女長編。同時にこれが日本に初めて翻訳された長編である。

 とはいっても実はたぶん、評者も読むのはこれが初めて。
 大昔に、作者の名前をジェリー・ソウル(50年代SFミステリ『時間溶解機』の作者……というより、評者にとっては東宝怪獣映画『フランケンシュタイン対地底怪獣(バラゴン)』の原案者)と半ば勘違いして本書を購入。
 初版の表紙ジャケットがキューピー人形みたいに可愛い女の子の不気味なアップというコワイものだったのでおぞけをふるい、そのままツンドクで何十年も放っておいた(汗)。ちなみに後年の新バージョンの表紙(森と少女を引きのロングカットで描いてある方)はすごく洒落てるね。こっちの表紙で出会いたかった気もする。

 それで21世紀の現在、その後、日本でもジョン・ソールが人気作家になったことぐらいはさすがに知っていたし、未読のタイトルのなかにはなんか面白そうなものもあるので、じゃあまずはコレから、とウン十年前に買ったNV文庫を読み出してみる。

 原書が刊行された当時のアメリカホラー小説界は、すでに完全にモダンホラーの時代に突入。科学視点の導入で怪異に切り込む手法なんかももう定着していたが、本作はあえて古色蒼然たる作劇で、当時の現代アメリカとスーパーナチュラルな要素を組み合わせている。
(恐怖の実態の正体は、ここではあえて書かない。まあプロローグ部分の第一章を経て、主幹部分の第二章へと読み進めば、すぐに分かるが。)

 感想としては実に胸糞が悪い話の反面、ストーリーに無駄もなく勢いがあるので止められない。もともとこういう話がイヤなら最初から読まなきゃいいのだから、ホラーとしては十分に成功しているといえる。

 ただまぁ面白かった、と一言で言い切るには、生理的に不快な作品で、こういうのを読むのはやはりタマにして、キングや澤村伊智みたいなアクションホラーの方をメインにしたい、とも思う。不愉快に思った人を責められないし、自分に年少の子供がいたら読ませたくない作品だ。『若草物語』でジョオの著作を見て顔をしかめたベア先生の気分がよくわかる(実は『若草~』は「小学六年生」の花村えい子のコミカライズ版~名作だと思う~しか読んでないが)。

 中身のイヤな描写にあんまり抵抗のない人なら評点は7~8点つけるだろう。
 まあ面白かった、のではあるが。

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