home

ミステリの祭典

login
死に賭けるダイヤ

作家 モーリス・プロクター
出版日不明
平均点7.00点
書評数1人

No.1 7点 人並由真
(2021/03/20 06:13登録)
(ネタバレなし)
 ロンドンのハットン・ガーデン地区。そこは英国の宝石産業や宝石の流通のメッカといえる一角だった。そこで白昼、殺人事件が発生。ベテランのパトロール警官リチャーズと街頭写真師の22歳の美人ライザ・ヒューグニンが不審者を見かけるが、相手は正体不明のまま逃げさった。やがて被害者は、近くに本社のある大手国際宝石会社「サガ」こと「南アフリカ宝石会社」の秘密調査員シートン・エスリッジと判明。そのエスリッジは、昨年9月にアフリカのキンバリイで発生した大規模なダイヤの原石強盗事件を捜査していた。ロンドン警視庁の面々と、そしてサガの保安部はこの殺人事件を契機に、過日の強盗事件にも深く関わってもいく。

 1960年の英国作品。
 プロクター作品はこれで2冊目の評者だが、これはノンシリーズものらしい? 現状でなぜかAmazonに登録がないが、ポケミス(世界ミステリシリース)653番で、初版は昭和36年9月。

  英国植民地だった第三世界(アフリカ)からのダイヤ輸入業種を主題または背景にした、ちょっと異色の警察小説。そんな趣の長編ミステリ。
 ロンドン警視庁の主力は「おやじさん」こと強面風のトレイル警視とその部下の青年ロビン・デイカー部長刑事。さらに事件に深く関わってくるサガの保安部主任ロジャー・クォーンもメインキャラの一翼となる。事件の重要証人となった美人の町娘ライザを挟むデイカーとクォーンの恋の三角関係? のような成り行きなど、敷居の低い感じでこちらの興味を惹いてきた。

 一種の業界ものの側面をミックスした警察小説で、当時はイアン・フレミングのドキュメント作品『ダイヤモンド密輸作戦』(1957年)なんかも書かれていたし、そういうアフリカからのダイヤ流通が話題になっていた時代だったのかしらん? とかやや呑気に読み進めていたら……後半で予想外の(中略)。
 もちろんここではコレ以上なにも書かないけれど、気安く構えていたら物の見事に足払いをかけてきた作品だった。こういうのに出会うのが、マイナーな旧作を発掘する楽しみ。
 あと、山場の前座的な部分で明かされる某登場人物の意外な秘めた事情は、さらに旧作の海外ミステリ数冊を偲ばせるもの。1960年前後の英国で、まだ<そういう見識>はあったのだなと、少し複雑な思いに駆られた。

 いずれにせよプロクター、まだ2冊目でナンだけど、地味で渋めながら、打率は高そう。またそのうち、未読の分を手にとってみよう。

1レコード表示中です 書評