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ミステリの祭典

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オブ・ザ・ベースボール

作家 円城塔
出版日2008年02月
平均点7.00点
書評数1人

No.1 7点 糸色女少
(2021/03/19 22:18登録)
破天荒で不条理な設定。物理学や数学や哲学の「ゴタク」を並べるのが妙味となっている。全体を包む倦怠感やワイズクラックの応酬、短い断章を重ねる構成も「ジェイ」というバーテンも出てくる村上春樹の「風の歌を聴け」あたりを彷彿させる。断章が四十章ちょうどというのも「風の歌を聴け」と同じ。これは意図的に合わせたのだろうか。
文章には類語反復が多用され、名目はあれど内実はあやふやなまま、いつ降るとも知れぬ人を待って毎日を無為に過ごすという話は、カフカの「城」やベケットの「ゴドーを待ちながら」も想起させる。そのような文学的仄めかしによるくすぐりが満載。
残酷な結末は唐突に訪れる。ラストの語り手の従容とした足取りは、「前向きの傍観」のようなものを感じさせ、いやな読後感はない。併録作「つぎの著者につづく」は、虚構の魔術師ボルヘスの上を行こうとする手の込んだ意欲作で大いにうけた。

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