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ミステリの祭典

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フェノメノ弐 融解ファフロツキーズ
フェノメノシリーズ

作家 一肇
出版日2013年02月
平均点7.00点
書評数1人

No.1 7点 メルカトル
(2021/03/19 22:41登録)
「もう、美鶴木夜石とは関わらないこと」知る人ぞ知る本物のオカルトサイト、『異界ヶ淵』管理人のクリシュナさんの忠告もつかの間、再び俺の前に現れた闇色の瞳の美少女・夜石は呟く。「なぜ、あの時計はいつも遅れるのかしら」血の雨が降る皇鳴学園の時計塔、転生する猫、読めば死ぬ呪いの書…。あり得ない場所に、あり得ないものが突如落下してくる武蔵野怪雨現象の最中、皇鳴学園の歪みの果てに「もういるはずのない少女」の影が立ち上がる…!一肇×安倍吉俊のタッグが描き出す、ありとあらゆる怪異を詰め込んだ極上の青春怪談小説がここにある。
『BOOK』データベースより。

怖いです。直截的な描写はなくてもちょっと想像力を働かせれば、目の前に情景が浮かんでくる感じです。怪異に遠慮なく踏み込んでいく少女夜石、『異界ヶ淵』の管理人で人のオーラが見えるクリシュナ、オカルト好きで夜石に関わることで怪異に巻き込まれる凪人。この三人の微妙なトライアングルが実に美しく均衡が保たれて、心地よく読み進めることが出来ます。登場人物が少ない分、物語が分散されることなく凝縮しており、濃密度が高い感じがします。

長めの短編三篇から構成されており、全てトーンが統一されており長編としても違和感なく楽しめます。どれも面白いですが個人的には『猫迷宮』が特に気に入りました。凪人が過去に飼っていたモモという雌猫と、友人から預かったミイ子という猫。この二匹の猫が招く怪異は時計塔事件を引きずって、哀しい余韻を残します。ただ曰くありげな東京のそこここで起こる怪雨現象にはあまり触れられず、続編である次巻に期待するしかなさそうです。

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