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ミステリの祭典

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デラニーの悪霊

作家 ラモナ・スチュアート
出版日1971年01月
平均点6.00点
書評数1人

No.1 6点 人並由真
(2021/03/17 04:36登録)
(ネタバレなし)
「わたし」ことノラ・ベンソンは、ニューヨーク在住の女流作家。医学博士の夫テッドが若い同僚の美人マルタとの再婚を願ったため離婚し、いまは13歳の娘キャリーと12歳の息子ピーターを養育していた。ノラのほかの唯一の肉親は弟で、出版関係のバイト青年ジョエル・デラニーだが、彼は奔放なGFのシェリー・タルボットにふられたことで大きなショックを受けていた。そんなジョエルとシェリーの仲が復縁しかけるが、ノラは弟の言動に何か違和感を抱く。一方でNYではしばらく前から謎の殺人鬼による若い女性の首切り殺人が続発していた。

 1970年のアメリカ作品。
『ローズマリーの赤ちゃん』(67年)と『エクソシスト』『地獄の家』(ともに71年)という大メジャー作品群の狭間の時期に刊行されたマイナーなモダンホラー。スーパーナチュラル的なオカルトの主題は、タイトル通りにズバリ「悪霊」(さすがにコレは、書いてもいいな~笑~)。

 具体的にどのような悪霊でどういう形で作中に出現する(描かれる)かはここでは書かないが、物語の後半、精神病理や民俗学の見識をもった学者が登場して怪異に接近。
 科学&疑似科学で怪異に斬り込むモダンホラーの作法は、この作品の時点でほぼ確立されており、モダンホラー小説分野の大系としては割と早い一冊といえるだろう。

 作者ラモナ・スチュアートは、半世紀を経た現在でも本作しか邦訳がないと思われるが、すでに本国では数冊の著作があった。
 主人公ノラの一人称視点で異常な事態に関わっていくストーリーの流れはそれなりに読ませるものの、一方でまだまだモダンホラー分野の文化が成熟していない時代に書かれた作品、という感じもしないでもない。全体的に、もうちょっと押せばさらに面白くなるであろう要所要所の演出が弱いし、クライマックスも話の核心に早く入りすぎる。それでも地味な? ネタでそこそこ楽しませてしまう辺りは評価しておきたいが。

 なお邦訳のハヤカワ・ノヴェルズは、この時期に乱発した、例の<返金保証>の帯封仕様で刊行。
「読者のみなさんいかがですか? 何が(中略)に起こったのでしょう? これから秘密のベールが剥がされてゆくにつれいよいよ恐怖は高まってゆきます。ただし、これ以上読み続けるのはごめんだ、とおっしゃる方がおりましたら、この封を切らずに小社までご持参下さい。代金をお返しいたします。」という、帯封の最初に書かれた口上が楽しい。(「中略」にはある固有名詞が入るが、あとは原文のママ。)

 21世紀の今でも、またこういうのをやればいいのである。
 電子書籍でやったらどうなるのだろうか。まあ考えてみれば、よくあるコミックの序盤や途中までだけ読ませて、本編をきちんと楽しむなら課金というのは、一種の<逆・返金保証>だろうな(笑)。 

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