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ミステリの祭典

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池袋ウエストゲートパーク
池袋ウエストゲートパーク・シリーズ

作家 石田衣良
出版日1998年09月
平均点6.50点
書評数2人

No.2 6点 雪の日
(2022/10/07 15:11登録)
非常にテンポのよい作品。
若さを感じさせる語り手の軽快さもいい、ただしその分読み手を選ぶのだろう

No.1 7点 人並由真
(2021/03/14 04:41登録)
(ネタバレなし)
 1997年から活字になり、およそ20年前からTVドラマ化やコミカライズもされている人気タイトル。
 00年代の東西ミステリにはそんなに詳しくない評者でも、すでにかなりのシリーズ続刊が出ているメジャータイトルということぐらいは知っていた。

 なお個人的には、原作も未読なまま視聴した、昨年秋からの新作テレビアニメ版が、本シリーズとのファースト・コンタクト。
 くだんのテレビアニメはそれなりに面白かったが、気がつけば、これだけの人気タイトルのハズ(?)なのに、本サイトではまだレビューがまったくない!?

 それでじゃあ原作ってどんなもんなんだろと気になって、ひと月ほどまえに入った古書店でかなり状態の良いデッドストック級の文庫本(このシリーズ第一巻、全4編の中短編集)を100円で購入。今から1週間くらい前から読み始めて、昨日ようやく読了した。

 一番驚いたのは、原作小説が作品の空気感もキャラクター描写も、アニメ版とまるで異なること。いやある程度は、大人・一般向け作品をティーンも観られる深夜アニメとしてマイルドに潤色しているだろうとは思ったが、これほどとは思わなかった。
 
 もちろん主人公マコトが大枠で正義漢の若者なのはアニメも原作もかわらないが、小説の方ではカツアゲを普通にしていた経歴も明かされるし、女子たちとの情交場面もごく自然かつあからさまに語られる。一応、当人のモラルの範疇ながら、ダーティな行動のリミッターもかなりゆるい。

 物語の方もアダルトな描写や未成年が被害者になる猟奇殺人などきわどいものが主体(少なくともこの1巻では)。アニメ版はよくいえば気を使って作った、わるくいえば生ぬるい作りだったことを、つくづく痛感した。
 
 そんなわけで個人的には、先に接したアニメ版との相応の乖離ゆえ、かなりショッキングな感触を抱く。
 しかし一歩引いて見るなら、実はこれくらいのクライムノワール、青春ノワールものなど、2010年代の国産ミステリ界では、たしかにさほど珍しくもないのである(だよな)。
 だから冷静に見れば<こなれのよい。その手の青春ノワール事件屋ものの新世代の先駆>という評価あたりに落ち着きそうだ?

 4編の中短編は、それぞれ基本的に池袋界隈の裏と表の素描、そこにたむろする主人公マコトをふくむ面々の人間模様を興味の核とするが、中にはミステリ的にちょっと~相応に工夫された話もあり、なかなか飽きさせない。
 リーダビリティの高い文体の軽さとそれぞれの話の主題の重さ。その双方のバランス取りが独特の手応えを感じさせるエピソードもあり、なるほどこれはファンも多いはずだとは思う。

 まあ私的には、今回の新作アニメ版は今となっては入門編として良かったと割り切り(今でも別にキライになったわけじゃないし、アニメ独自の演出で良かったとこもあった)、改めて原作の二冊目以降も、機会を見て読んでいこうとは思っている。 

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