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ミステリの祭典

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ならず者の鷲

作家 ジェイムズ・マクルーア
出版日1979年02月
平均点6.00点
書評数1人

No.1 6点 人並由真
(2021/03/08 05:10登録)
(ネタバレなし)
 南アフリカの小国レソト。そこに表向きは海外特派員として駐在する英国情報部の青年フィンバー・ブキャナンは、CIA派遣の美人スパイ、ナンシー・キットスンと時に情報交換をしながら、おおむね平穏な日々を送っていた。だがそんななか、山地マパペングに不穏な動きが認められ、その中心人物のひとりはかつてヒットラー政権のナチスの党員だったダーク・スタインだった。上司アンドルー・マンロー少佐から情報と指示を受けたブキャナンは、知己もいるマパペングに向かい、状況を探るが。

 1976年の英国作品。同年度のCWA、シルバー・ダガー賞受賞作品。
 
 ハードカバーの本文二段組、紙幅250ページはそんなに厚くはないが、ブキャナンが現地に赴き、主要キャラと顔を合わせながら調査を始めるあたり=中盤くらいまでは、叙述の丁寧さが災いしてかなりかったるい。
 読み終わって後から思うと、決して冗長な展開というわけではなく、きっちりとデティルを積み重ねている作法だから、文句を言うには当たらないんだけれど。

 後半になって主人公とヒロインが窮地に陥り、さらに派手目な殺傷沙汰が生じるとようやく話に弾みがついてくる感じではある。
 ネオナチテロリスト側の、物語のクライマックスに関わる謀略の実態も明らかになり、この辺になるとそこそこ面白くはあるが、とにもかくにも実にマイナーかつローカルな第三世界の小国での事件。
 国の規模の大小で、そこでの無法テロの是非を問題にするのはもちろんおかしな話だが、それでもどうしたって地味さと渋さ、そして独特のエキゾチシズムがついて回る。たぶん当時のCWAの選考メンバーには、このマイナートーンの晦渋ぶりが受けたのであろう。
 終盤、(中略)が(中略)する作劇はちょっと意表を突かれたが、<この手のもの>の一本としては、こちらの心に大きく響くものは特に得られず終わった。それでもちょっといいな、と思ったシーンや作劇のツイストなどはひとつふたつはあったので、評点はこのくらいで。
 
 思えばマクルーアを読むのも、何十年ぶりであったな~。

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