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ミステリの祭典

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サロメ後継

作家 早瀬乱
出版日2006年12月
平均点5.00点
書評数1人

No.1 5点 猫サーカス
(2021/03/02 18:48登録)
人から人へと伝わっていく欲望と人間の弱さから生まれる自傷行為にまつわる奇妙で恐ろしいミステリ。東京多摩地区の、とある産業会館の講習室で手首が発見された。小さな箱に入った指のない左手だった。捜査を担当した刑事は、部屋を使用していた「約束の地」という服飾雑貨会社を訪ねた。やがて、事件に関わった人たちが次々に謎の死を遂げて行ったり失踪したりしていく。事件の背後には、リストカットを繰り返す女性たちがおり、さらにはオスカー・ワイルドの戯曲「サロメ」を演じる団体と心に病を抱えた人たちの存在が浮かび上がってくる。弱さゆえに欲望から逃れられず、いつまでも自分自身を傷つけてしまう者たち...。探偵小説としての展開もさることながら、全体に異様な感覚が漂っている。予断を許さないミステリアスな話で、しかもホラーなのだ。切断された手首の捜査をしていた井出川刑事が主人公かと思えば、その刑事は第一章で消えてしまう。第二章以降に登場するのは、井出川刑事の息子や娘。だが彼らもやがて物語の舞台から消えていく。一体どこへ着地するのか、その興味で最後まで読ませる。

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