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ミステリの祭典

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バグダードのフランケンシュタイン

作家 アフマド・サアダーウィー
出版日2020年10月
平均点7.00点
書評数1人

No.1 7点 糸色女少
(2021/02/28 20:15登録)
連日自爆テロが起き、死と暴力が日常化している05年のイラクが舞台。ある男が肉塊化した死体の破片を縫いつなぎ、1人分の死者を作るが、それが忽然と姿を消す。まもなく町では奇怪な連続殺人事件が起きる。犯人は例の死体だった。
元祖フランケンシュタインは名前がなく、怪物を作った科学者の名前で呼ばれたが、バグダッドの怪物は「名無しさん」のまま。それは彼を生んだのは一人の男ではなく、喪失感や憤怒で心がゆがんだ匿名の人々であることを示しているようにも思える。名を持たぬ怪物は、死者たちの気持ちや記憶にしたがって復讐に走るが、過酷で即物的な現実の中、彼自身もまた変化していくことになる。それは希望か絶望か。もしかしたらディストピアは、「現実」という名前を持っているのかもしれない。

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