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ミステリの祭典

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透明性

作家 マルク・デュガン
出版日2020年10月
平均点6.00点
書評数1人

No.1 6点 小原庄助
(2021/02/25 08:40登録)
時は2060年代。地球温暖化により多くの人間はバーチャル空間で暮らし、北欧に移住した。グーグルなどの巨大デジタル企業が人類の全ての情報を可視化し、健康状態、遺伝子、思想傾向、性的嗜好までを掌握する。アルゴリズム分析によりマッチング率の高い相手との結婚が提案され、離婚率は低下。データは抜き取られるかわりにベーシックインカムで収入が担保され、貧困問題もほぼ解決だ。
一見平穏ながらこれは「操られているという意識なく操られる」専制デモクラシー下での、自由と個性を奪われた生活である。女性主人公は自家用車の自動運転装置を外してハンドルを握りスリルを味わうが、この行為も違法。事故にあう自由すら許されない。
物語は、グーグルを出し抜き、主人公の小企業が不老不死のシステムを構築して全世界の度肝を抜く。魂のありようで死後の復活が可能となるそれは、彼女を神と仰ぐ、新しい宗教となるのか?
「かつて誰も私ほど他人の生死を左右する権利を持った者はいない」高度な情報社会を皮肉り、人類の強欲を戒め、利他を問い直す本書のテーマは今日的だ。地球による人類への報復という展開も、真実味がある。次世紀に何を残せるのか、本書を通して考えてみるのも面白い。

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