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ミステリの祭典

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ケイリン探偵ゆらち 女流漫画家殺人事件

作家 高千穂遙
出版日2014年04月
平均点6.00点
書評数1人

No.1 6点 人並由真
(2021/02/20 01:57登録)
(ネタバレなし)
 人気アイドルグループ「ODAIBA60」の常連センターだった「ゆらち」こと大星由良は、新たな世界に挑戦しようと、芸能界を卒業。ガールズケイリン選手となった。まだ明確な成果を出せないまま精進を重ねる由良だが、そんな時、叔父で彼女の師匠であるベテラン競輪選手・捲(まくり)五郎が、殺人事件の重要参考人となる。五郎は大人気の女流漫画家、立科姫子が構想中の新作青春競輪漫画に際して、彼女の取材に協力していたが、その姫子が何者かに殺害されたのだ。ミステリ好きの由良は五郎の潔白を明かすため、自分の大ファンである警視庁警部・南大寺定信の協力を仰いで、事件の捜査に関わるが。

 消費税108円時代の末期に、ブックオフの100円コーナーで発見して購入。その時点まで作品の存在も知らなかったので、へえ、あの高千穂遥がこんなものを書いていたの、という気分であった。

 作者のサイクリング分野への傾倒ぶりぐらいは評者でも前から知っていたので、その素養を活かしたキャラクターミステリだろうというのは一目瞭然。
 しかしその辺りは大枠程度というか必要十分程度には抑えながら、むしろ作品の本題は、21世紀の出版不況と、漫画界の裏側。
 そっちの方に関しても、さすが、何十年にわたって漫画やアニメなどのジャンルとも密接に関わりあいながら飯を食ってきたベテラン小説家だけあって、細部のリアリティはかなり生々しい。

 ただしミステリとしては、とにもかくにもフーダニットの謎解きの形をとりながら、終盤近くで明かされる(中略)や、かなり遅めに出てくる(中略)など、ちょっとキビシイところもなくもない。いや、ひねりをきかせようとしている工夫のほどは、感じられるんだけれどね。

 ヒロインのゆらちは、元アイドルの女子競輪選手、アマチュア名探偵という設定が、まだまだ十二分に生かされていないような印象(大人気アイドルだったというある種の特権を活かして関係者の口をかたっぱしから開かせまくる図は面白いような、さほどそうでもないような……)。
 よくいえばキャラクターミステリの主人公として、もっとのびしろがあると思うので、しばらく間が空いてはいるけれど、シリーズ第二弾も書けるなら書いてほしい。
(できましたら『ダーティペア91(くのいち)』のマトモな小説版も、いっしょに執筆&刊行をお願いします。) 
 評点は0.5点オマケ。

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