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ミステリの祭典

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狩眼

作家 福田栄一
出版日2009年09月
平均点6.00点
書評数1人

No.1 6点 メルカトル
(2021/02/19 22:42登録)
多摩川河川敷で、野田という医師の両眼が刳り抜かれた死体が発見された。事件から二週間経っても、所轄の南多摩署の刑事課は有力な情報も得られず、捜査は行き詰まる。そんな中、若手刑事の伊瀬は上司の水野から、突如別の任務を与えられた。それは、警視庁本部からきた戸垣巡査部長と組んだ、独自の“調査”だった。異常犯vs.若手&ベテラン刑事との攻防戦。
『BOOK』データベースより。

世間的に知名度の低い作家による本格警察小説。しかし、端正な文章で書かれたずしっと重く内容の濃い作品でした。両眼を刳り抜いたり傷つけたりする動機は早々に明かされて、その意味での興味は薄れてしまいますが、地道な捜査の中に様々な人物からの視点も入れ込み、最後まで緊張感を維持して読むことが出来ました。ベテラン刑事で単独行動を黙認されている、言わばはぐれ刑事の戸垣と若手でこれと言った特徴のない、程々の正義感を持つ伊瀬のコンビは決して心を通わせる事はなく、付かず離れずの関係性を保ちながら捜査に臨みます。

そして次第に明らかになる犯人像、被害者のミッシングリンク、裏に隠された真実、戸垣の苦い過去などがじわじわと迫るように表出してきます。決して読んでいて気持ちの良い話ではありませんし、際立って面白い訳でもないですが、かなりのめり込めます。警察小説の王道を往くと言ってもよい作品に仕上がっているのではないかと思いますね。

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