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ミステリの祭典

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レッド・サタン殺人事件
月山 翔シリーズ

作家 永守琢也
出版日2004年03月
平均点5.00点
書評数1人

No.1 5点 人並由真
(2021/02/18 06:13登録)
(ネタバレなし)
 交通事故で両親と死別した少年・月山翔とその妹みどりは、九州の祖父に引き取られた。現在は東京の大学で剣道選手として励む翔。そんな彼には、アマチュア名探偵というもうひとつの顔があり、すでに現実の事件を解決に導いた実績があった。その翔に、同じ大学のミステリー研究会の代表で学生作家でもある目黒広希が接触してきた。そしてそんな彼らの周囲で、一種の密室状況? といえる殺人事件が発生する。

 本サイトで評者が4年半前にレビューを書いた2016年の新刊『黒い騎士殺人事件』、それに先立つ月山翔シリーズ2冊分のうちの先行作(なお『黒い騎士殺人事件』の方は、作者がペンネームを変えて、永田文哉の筆名で刊行)。

 つまりこの『レッド・サタン殺人事件』(2004年)が翔のデビュー編ということになるわけだが、もし本作が作中の時系列順でもいちばん早いのなら、今回の物語以前に翔はすでにいくつかの<語られざる事件>を解決して、アマチュア名探偵として名を挙げているという設定になる。

 まあそれはとりあえずどうでもいいのだが、先に読んだ『黒い騎士~』が、あまりに破壊力のあるバカミストリックっぷりだったので、今回もそのティストを期待したが、大ネタがいちばん最初の伏線というか手がかりを与えられた時点でもうバレバレ。
 さらに自分は帯付きの状態のいい古書を購入して読んだのだが、ソコ(本の帯=腰巻)に書いてある思わせぶりな惹句も悪い方向に働いて、あまりにも早々と犯人が見え見えになってしまった。
(いや、くだんの帯には、具体的にどうのこうのと、犯人の情報を書いてあるわけじゃないんだけどね。)

 残念ながらトータルとしての謎解きミステリの求心力は、『黒い騎士~』のときの半分のインパクトもなかった。
 とはいえ実はこっちを読み終えてみると、その『黒い騎士』に対しても改めて思うことがじわじわ頭に浮かんできたりする。まあその辺は、ここでは詳しくは書けない。
 (中略)ならわかってくれるだろうか。

 ただし2つめの殺人は、それなりに細部での演出を工夫しようという意欲は感じる。しかしそうなると今度は、情報の後出しなどが気にかかってきて、アレなんだけれど。

 そんなこんなの一方で、小説としては『黒い騎士』よりも、先行するこっちの方がなんかこなれがいいような気もするよ。こちらでは警察も、まあまあ自然にストーリーにからんでくるし。

 ヘボミスなんだけど、ダメミスとは言い切りたくないところもある作品。
 しかしとにかくミエミエの中盤は、本当に退屈であった。
 後半~終盤の微妙な盛り返しだけは評価して、この評点で。

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