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ミステリの祭典

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破産寸前の男
広告代理店社長ボーモント

作家 ピーター・バーセルミ
出版日1992年12月
平均点5.00点
書評数1人

No.1 5点 人並由真
(2021/02/08 06:46登録)
(ネタバレなし)
 ヒューストンで広告代理店を営む「ぼく」ことボーモントは、ハンサムな中年男。だが頭がハゲかけていて、複数の成人した子供がいる。何より現在は契約が少なくて、美人の秘書のエイミーが借金の督促の対応に苦労している。そんな時、大手石油サービス業「ウェラメーション社」の代表であるクレイ・トマスから大口の仕事を取るが、実はその契約は先方の会社の公式な窓口を通してないものだった。報酬を払ってほしければと、トマスは、とある秘密裏の行為を指示してきた。

 1987年のアメリカ作品。
 中堅広告代理店(ただし社員は少ない)社長ボーモントシリーズの第一弾で、翻訳が出た時点で本国ではすでに第三作目までが刊行されていたらしいが、日本への紹介はこれ一冊で終わった。

 本作では、いわくありげな依頼人トマスとの接触を経て、どうも何かきな臭い案件に巻き込まれたらしいボーモントが、事態の把握と窮地からの反撃を画策。途中で周囲の思いもよらぬ事実なども見えてくる。

 一番近いイメージでいうなら、我が国の生島治郎や北方謙三が書きそうな、中小企業の中年社主を主人公にした巻き込まれ型の(それほどコワモテではない)ハードボイルドか、あるいはノワールサスペンスという感じ。

 ただし物語の半ばで事件の深層が(中略)に及ぶと明かされる。物語自体はそんなにややこしいものでもないが、その事件の題材そのものがちょっと日本人には実感しにくい? ものなので、そこらへんでソンした感じ。
 本国アメリカの読者なら、もうちょっと身近な物語として楽しめたんだろうな? という印象だ。

 おかげで、キャラクターたちの配置やストーリーのテンポそのものはそんなに悪くないんだけど、なんか風邪をひいたときのボケた頭で、楽しめないままお話を追っているような感覚であった。

 第二作目以降のシリーズの邦訳が続かなかったのも仕方ないと思う。
 初弾がこういう作品・事件だから損をした? と見るならば、もったいないような、そうでもないような。

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