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ミステリの祭典

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午後の足音が僕にしたこと

作家 薄井ゆうじ
出版日1996年05月
平均点6.50点
書評数2人

No.2 7点 ミステリーオタク
(2022/07/23 13:10登録)
 かなり短い作品ばかりが二十余作収録された短編集。

 大半がボーイミーツガール物(1作だけガールミーツボーイ)だが、始めの数作を読んだ時点で何というか、ストーリーに責任を持たずに思いつくままに書き綴り最後は読者の期待など全く無視して意味がありそうなふりをしたセンテンスで適当にクローズしてしまう、という印象ばかり受けたので投了しようかとも思ったが5作目ぐらいになると、このツカミドコロのない作風が少しクセになってしまった感も否定できず結局読み続ける。
 以後はボーイミーツガールのみならず「不安定なカップルの物語」なども語られるが後半に入ると殆どが海外編になる。マニアックな地域が多く情景描写も趣が深く、作者の海外旅行通ぶりが窺われる。
 ただし、最終話は国内に戻り・・・・マトメも悪くない。

マイベストは「中国語のカサブランカ」:これだけは文句なしにオススメできる。
次点は「パタゴニアで買えなかったもの」

No.1 6点 メルカトル
(2021/01/31 22:37登録)
こつ。こつ。午後1時25分、今日もハイヒールの音が町の東からゆっくりと近づいてくる。足音は「僕」の仕事場のすぐわきを通り過ぎ、町の西までいくと戻ってくる。そして、町の東へ消えていく。彼女は、もう何年も同じ行動を繰り返し続けていたのに、ある日、足音が途絶えた……。人知れずざわめき揺れる心、一瞬のロマンス――読むことの楽しさを堪能できる極上の小説集。
Amazon内容紹介より。

これぞ分類不能の短編集。およそ文庫本10ページの短編が22篇収められています。ほぼ毎回出てくる主人公の「僕」はおそらく同一人物で、必ず女性が絡んできます。そして小さな小さな謎やほんの些細な不思議な体験をすることになります。ある意味では恋愛小説の様相を呈していますが、最終話で見事にひっくり返されます。これはまさしくミステリの手法で、最後まで読んでみないと分からないものですね。

ドラマティックとは無縁の、どちらかと言うと淡々とした作品ばかりで誰にでも書けそうな感じがします。しかし、実際書けないんでしょうね。これで食べていけるのかと他人事ながら心配になったりしますが、それなりに数は書いているようなので大丈夫みたいです。

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