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ミステリの祭典

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黒揚羽の夏

作家 倉数茂
出版日2011年07月
平均点6.00点
書評数1人

No.1 6点 人並由真
(2021/01/31 05:47登録)
(ネタバレなし)
 2010年前後、その年の夏。中二の長男・千秋、小五の長女・美和、小二の次男・颯太たち滴原(しずはら)家の三兄弟は、両親が離婚相談中のため、母・雪子の実家である遠方の田舎の上条家に預けられた。だがそこで千秋は、惨殺されて車のトランクに入れられた少女の死体に遭遇。さらに美和は、不可思議な怪異? を体験する。それと前後して兄妹は、土地の医者・唯島家の娘である同世代の美少女姉妹と対面。猟奇的で不条理な少女失踪事件に揺れる田舎町だが、まもなく一同は、実はほぼ60年前の1950年代初頭にも同様の少女失踪事件、そして惨殺事件が起きていたことを知る。

 ポプラ社が主催する、一般向けの小説新人賞「ピュアフル小説賞」の第一回「大賞」受賞作品。文庫オリジナルで刊行。
 評者は特になんの予備知識もなくブックオフの書棚でたまたま手に取り、巻末の解説(金原瑞人なる方が担当)での<ミステリとも幻想小説ともファンタジーとも……(以下略)>という文言に接して、面白そうだと購入した。

 全体的にはジュブナイルっぽい仕様の作品だが、作者は少年主人公、千秋の秘められた過去に仕込む形で、なかなか際どい描写やけっこうキツイ文芸も導入。その辺も踏まえて、硬質なヤングアダルト向けの作風になっている。

 ホラーミステリとしては、地方の町で数十年前から起きている怪事件の実態が最終的にどこに着地するか、そうそう底を割らない。
 途中~物語の後半~で、真相に迫る<ある情報>が開示されるが、異様な迫力で読者に語られるその部分は、なかなかのインパクトだ。
 はたして最後に迎える決着は賛否が割れそうな気もしないでもないが、真相そのものも、また小説前半からのもろもろの伏線の処理も、こういう小説の作り方ならアリではあろう。
(ただし細かいところに引っかかる人は、いくつかのポイントゆえに、減点評価を優先しそうな感じもある。)
 
 個人的にはこういう形質の作品として、十分以上に歯ごたえのある一冊であった。
 妙に読み手を煽っておいて……の部分も、なきにしもあらずだが。
 
 なお本書はちょうど10年前の作品だが、その後も作者はポプラ社や早川書房などで(冊数はそう多くないが)着々と著作を上梓。順当に実績を築いているようである。そのうちまた何か縁があったら読んでみよう。

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