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ミステリの祭典

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首吊少女亭

作家 北原尚彦
出版日2007年08月
平均点7.00点
書評数1人

No.1 7点 メルカトル
(2021/01/29 22:21登録)
英国留学中に、ネス湖へのツアーを申し込んだ女子大生の私。だが、参加者は日本人の私ひとり。ガイドが運転する車でネス湖へ向かうと、道路沿いに小さなパブが建っている。看板には「The Hanging Girl」と奇妙な名前がついている。ヴィクトリア朝時代に起きた少女の首吊り自殺に由来があるというが…。―表題作「首吊少女亭」19世紀末、帝都ロンドンを舞台に、怪奇と幻想で織りなされる珠玉のヴィクトリアン・ホラー。
『BOOK』データベースより。

何と言っても起承転結が確りしているのが良いですね。難を言えば結が呆気ない点でしょうが、野卑なシーンなどでも品性が感じられ、文章が美しいです。ロンドンを舞台にイギリスと言えばという要素が盛り込まれていて、何となく当時の帝都の風景が浮かんでくる様でもあります。『眷属』ではシャーロック・ホームズらしき人物(あとがきで当人だと言明されている)がちょっとだけ出てきますし、表題作ではネッシーに関する記述があったりします。12の短編が納められていますので、様々な毛色の違う作品が楽しめると思います。全体的にはホラー色が濃いですが、怖いと言うよりラストでこの先どうなってしまうのか不安感を煽る物が多い気がします。

個人的には切り裂きジャックを扱った『妖刀』、古書愛好の度が過ぎて予想もしていなかった事態に陥る『愛書家倶楽部』、最も奇想が際立ったとんでも小説『火星人秘録』、下水道を浚って金属などを拾い集め金にする者たちに訪れる恐ろしい結末を描いた『下水道』、後はやはり表題作が印象に残ります。残りの作品も含めて駄作凡作のない良品揃いの短編集だと思います。

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