(2021/01/26 21:54登録)
(ネタバレなしです) このタイトルで日本独自に編集された2巻の創元推理文庫版を連想する読者も多いとは思いますが、ここで紹介するのは1920年から1923年にかけて発表された8作のシリーズ作品を収めて1923年に発表されたオリジナル短編集です(国書刊行会版の「ソーンダイク博士短編全集第2巻 青いスカラベ」で読むことができます)。シリーズ短編を収めた短編集は「ジョン・ソーンダイクの事件記録」(1909年)、「歌う白骨」(1912年)、「大いなる肖像画の謎」(1918年)がありますが「大いなる肖像画の謎」は全7作の中短編の内、シリーズ作品はわずか2作なのでシリーズ短編集とは主張しにくく、本書こそがシリーズ第3短編集と呼ばれるにふさわしいと思います。過去の作品と大差ないレベルなのでもはや時代遅れと評価されるかもしれませんが、法医学者探偵としての個性はちゃんと発揮されていて個人的にはこれでいいと思います。私のお気に入りは聖書に由来するタイトルが中身とよく合っている「人間をとる漁師」とおよそ法医学者向きとは思えない金塊盗難事件に挑戦する「盗まれたインゴット」です。余談ですが白水社版で「試金石」のバクスフィールドという人名をバクスフォードと誤記して混乱させているのは残念。それでも雑誌掲載時の写真(単行本では削除)を復活掲載してくてことへの感謝の方が上回りますが。
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