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ミステリの祭典

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蟲と眼球と白雪姫
蟲と眼球シリーズ

作家 日日日
出版日2006年12月
平均点7.00点
書評数1人

No.1 7点 メルカトル
(2021/01/25 22:29登録)
エデンの林檎の不思議な力で人知を越えた存在となった少女・眼球抉子―通称グリコ。不死身の彼女は、千余年の時の中で初めて、「大切な存在」宇佐川鈴音と出会ったが、林檎を狙う者たちとの戦いのなか、鈴音は意志のない生ける屍・肉人形となってしまった。グリコは、「仲間」になった殺菌消毒・美名、不快逆流・蜜姫とともに、鈴音をもとに戻せる人物―『一人部屋』を探し出すが、あと一歩のところで、宿敵『最弱』に鈴音を奪われてしまう。鈴音を助けだそうと、グリコたちは奔走するが、街にはバケモノが溢れ出し始めていた…。本当の幸せを取り戻すための戦いがついに終結!不器用な優しさを秘めたグリコたちの物語、最終巻。
『BOOK』データベースより。

プロローグとエピローグのみで構成されており、いわば後日譚の様相を呈しています。戦いで亡くなった者、生き残った者達の鎮魂歌であり、最終巻に相応しいエピソードで満載です。最終的にはグリコと鈴音と賢木の三人がその後どうなっていくのかが興味深く描かれていて、その意味でもこれだけ広げ過ぎた物語をどう収束させるのかという問いに、十分応えるものだと思います。

ここに至るまでの道中は、神話が絡んだり欠片、蟲、林檎、能力者などの複雑な要素がない交ぜになってかなり分かりづらくなってしまい、結局第一作で完結していた方が良かったのではないかとも思えましたが、結果的にはシリーズ化もアリだったかと今は考えています。エピローグの後のプロローグには唖然としました。まあしかし、エンディングとしては大いに感心させられました。ただ、これには賛否両論あろうかとは思います。個人的にこういう形でしか完結できなかった作者に同情しますし、憐れみすら覚えます。しかし、読後感の爽やかさは何物にも代えがたい愛しさを感じたのでした。

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