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ミステリの祭典

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秋山善吉工務店

作家 中山七里
出版日2017年03月
平均点7.00点
書評数1人

No.1 7点 メルカトル
(2021/01/22 22:35登録)
父・秋山史親を火災で失った雅彦と太一、母・景子。止むを得ず史親の実家の工務店に身を寄せるが、彼らは昔気質の祖父・善吉が苦手。それでも新生活を始めた三人は、数々の思いがけない問題に直面する。しかも、刑事・宮藤は火災事故の真相を探るべく秋山家に接近中。だが、どんな困難が迫ろうと、善吉が敢然と立ちはだかる!家族愛と人情味溢れるミステリー。
『BOOK』データベースより。

イジメ、反社会的勢力、モンスタークレーマーに悩む母子を、まるで『スカッとジャパン』のように一刀両断で解決する祖父善吉の活躍を描く爽快な作品。第三章までは火災で父を失った息子の太一、雅彦、妻の景子の一人称で描かれ、それぞれの心情が痛いほど伝わってきます。善吉の出番は専ら終盤で、一体この老人は何者?と誰もが目を疑うような超人ぶりを発揮し、何事にも微動だにしない信念を見せつけます。又第三章では善吉に成り代わってその妻の春江がその老獪さで、クレーマーをやっつけます。しかし、それもまた善吉の助言によるものなのです。

第四章、最終章では刑事の宮藤が火災事故の真相を暴くミステリに変貌し、まるで万華鏡のように章ごとの色や模様を変え、様々な変容を見せます。その手際は見事の一言に尽き、流石に中山七里、その剛腕はまだまだ衰えを見せません。最終盤では思わず落涙してしまったのは私だけではないはずです。

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