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ミステリの祭典

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SFドラマ殺人事件
スーパー&ポテト・シリーズ

作家 辻真先
出版日1979年05月
平均点4.00点
書評数1人

No.1 4点
(2021/01/19 13:48登録)
 ガールフレンドの兄・克郎の勤める夕刊SUN社から、ミステリの執筆を依頼されたポテトこと牧薩次は、その腕だめしに編集長からヤマトテレビのSFドラマ『超人テルル』の撮影取材を命じられる。が、ボーイフレンドの華麗な作家デビューを願うスーパーこと可能キリコの熱い期待に反して、薩次の筆は遅々として進まない。けれどそれとは裏腹に現実の『超人テルル』撮影現場では、SFじみた奇怪な事件が連続して起こった。
 テレポーテイションと見紛うばかりの自動車事故死、ロボット殺人、スタジオセットの宇宙船内での密室殺人。そして沈黙を守る薩次をよそに、夕刊SUN社にはこの事件を推理するミステリの原稿が届けられた。名づけて『SFドラマ殺人事件』――。
 作者は誰だ、犯人は誰だ。新たなる構想を得て、キリコ・薩次の名コンビ再登場!!
 昭和五十四年五月に刊行された、スーパー&ポテトシリーズ第四作。作中時間では青春三部作最終篇の『改訂・受験殺人事件』とほぼ並行して起きた設定で、事件の発生こそ若干遅いものの終息したのは実はこちらが先。「受験史上はじめての共通一次学力試験(現・大学入学共通テスト)」に接するキリコたちの姿が描かれており、真犯人の動機も一部前作と通底しています。そういう訳で本書はある意味『改訂~』の姉妹篇と言っていいでしょう。ただここまでで精魂尽きたのか、〈作者さがし〉なる定番のメタ的趣向もあまり生かされず、正直あっても無くても良いようなもの。派手な割には繰り出されるトリックも小粒で、最後の釣瓶撃ちで何とかという感じで決して満足の行くシロモノではありません。
 最初に提出される〈テレポーテイション云々〉は強烈ですが、劇中劇と重ねる見せ方が上手いだけで、実は只のアリバイ崩し。それもセオリー通りの奴で、回収されるのも序盤のうち。ただここで読者に事件の構図を読ませておいて、後で引っくり返すのはある程度評価できますが。
 同年の発表作は高一コース連載の『伝説 鬼姫村伝説』と次作『SLブーム殺人事件』。これに本業のテレビアニメ『キャプテンフューチャー』『サイボーグ009(第2期)』など四本の脚本作業が加わる訳で、書き飛ばしたとは言いませんが『伝説~』『SLブーム~』の評価も芳しくないため、辻氏の比重はこの時期アニメ脚本に移っているのかも。シリーズ第四~第六長篇がマトモに検討されてるのは他サイトでも殆ど見ませんが、やはりそこにはそれ相応の理由があるのでしょう。ジュヴナイルにしては味があるけれど、肝心の点数は5点寄りの4.5点。

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