(2021/01/06 21:55登録)
(ネタバレなしです) 英国のクリフォード・ウィッティング(1907-1968)は1937年にミステリー作家デビューしていますのでニコラス・ブレイク、クリスチアナ・ブランド、シリル・ヘアー、マイケル・イネスらと活躍期が重なるのですが日本では非常に不遇で、初めて翻訳紹介されたのは21世紀に突入してからです。作品数も多くなく、チャールトン警部シリーズが11作、チャールトンの部下のブラッドフィールド巡査が警部に昇進して主役を務めるシリーズが3作、非シリーズ作品が2作に留まります。1939年発表の本書はチャールトン警部シリーズ第4作の本格派推理小説です。クリスマスの1週間前の日曜日、クリスマスソングを合唱しながら街中を行進して家々を訪問して寄付金を集めるという募金活動の最中に参加者の1人が失踪します。犯罪だとすると募金横領ぐらいしか思いつかず、登場人物リストに載ってない人物が多く登場することもあってアマチュア探偵たちの初期捜査は盛り上がりに欠けます。チャールトンが捜査に参加して凶悪犯罪の可能性が高くなりますけど、失踪者の秘密の謎解きに重点を置いたプロットはじれったいぐらいに地味で論創社版の巻末解説もそこを問題視しています。とはいえ最後はきっちり犯人当てとして着地しています。短いながらも人間ドラマ要素を織り込んでいるところはヘンリー・ウエイドを彷彿させ、最終章での「悲しい追記」が何とも言えぬ余韻を残します。
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