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ミステリの祭典

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狼には気をつけて
漫画

作家 遠藤淑子
出版日2008年09月
平均点7.00点
書評数1人

No.1 7点 クリスティ再読
(2020/11/29 09:46登録)
マンガでミステリ。今回はハードボイルドな私立探偵の話。

NYの私立探偵、キース・フォレストは、IT有名企業のA・C・アーヴィング社が出した、ボディガード大募集の新聞広告を見て、選考会場へと。そこで....
はい、マンガですからね、金ダライが降ってきて、タライに当たらなかったキースが「大当たり!」。

上から降るものと言えば金ダライか一斗カンかヒョウタンツギだからよ。能力はどうでもいいのよ。とりあえず運のいい人が雇いたかったの。

と、説明するのは10歳の少女、アレクサンドラ、愛称アレク。キースに依頼された仕事は、この少女アレクのボディガードとして、明日カリフォルニアの祖母の「お見舞」に同行すること。しかし、この「お見舞」に一番に駆け付けた孫には、一族の後継者の座が約束されるのだ。それぞれ非合法の妨害活動も辞さないライバルが3人。「君の仕事は私の盾よ」未成年は同行者が一人許されるために、キースはアレクのボディガードとして雇われたのだった!

このアレク、実は6歳でMITに入学して3年で卒業した天才少女。父親が経営している優良企業のA・C・アーヴィング社を、アル中で廃人の父に代わって、陰で実質経営しているのがアレクだった...と、年に似合わない知性と行動力を備えた少女。しかしそれでも女の子で、時にはコドモらしい想いに捉われたりもするのだが、なにせ身体的にはか弱い。このアレクを守る「盾」であり、破天荒なアレクへの「お目付け役」でもある、相方の役目をキースが果たすことになる。

作者は、ハートフルコメディの名手として90年代を中心に白泉社で名を馳せた遠藤淑子。いや遠藤淑子のマンガって、実は「ミステリ」に類別される話がものすごく多いのだ。「エヴァ姫」「マダムとミスター」など、一見ミステリとは無関係に見える話でも、起きる事件はかなりハードにミステリ寄り。「エヴァ姫」でも連載第二話になった話なんて、絵画の身代金を要求される話で、ギャグタッチがなんその、絵の隠し場所などトリッキーなアイデアも含んでたりするわけで、実のところ「少女マンガのオリジナルのミステリ作家」としては、なかなかイイ線を行ってる作家だと評者は思ってる。
初期に「ハネムーンは西海岸へ」で私立探偵主人公のミステリがあるんだけども、満を持してシリーズとして書いたのがこの「狼には気をつけて」になる。アレクorキースが2話に一度は殺されかけるくらいの頻度でハードなアクションがある。産業スパイをあぶりだそうと仕掛ける第2話、警官時代に誤射で死なせた恨みをキースが受ける第3話、環境テロ団体に社長と間違われてキースが誘拐される第7話、ゲイの間での事件を捜査する第12話(キースがルミノール反応を実演して見せる)などなど、ハードな事件をアレクとキースの名コンビで事件を解決していく話になる。でこれがやはり遠藤淑子、ということもあって、実にハートフルなイイ話にになっている打率が極めて高い。遠藤淑子のピークの作劇能力の凄さが味わえる名シリーズである。

ベッドの下にオバケがいないかどうか、見てくれない?
OK,すぐ行くよ

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