スパイのためのハンドブック ウォルフガング・ロッツ |
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作家 | 評論・エッセイ |
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出版日 | 1982年03月 |
平均点 | 8.00点 |
書評数 | 1人 |
No.1 | 8点 | 斎藤警部 | |
(2020/11/21 12:14登録) 或る正月、帰省先の駅ビルで見つけて帰りの新幹線で読み切った本。元モサドの花形スパイ、ウォルフガング・ロッツ先生の書いた、スパイになりたい人のための心得書。その名も『スパイのためのハンドブック(原題:A Handbook For Spies)』。 スパイ稼業の事に特化して掘り下げながらも、スパイのみならずこの世に生きる人全ての良く生きるヒントに満ちた素晴らしい書で、個人的には大昔家のトイレに置いて読んでいた鈴木大拙先生『禅とは何か』に非常に近い感触を覚えました。 いや本当に仏教の書っぽいんですよ(著者本人は「イスラム教に寛容なキリスト教徒」のふりしてたユダヤ教徒なんだけど)。 また、むかし連れられて行った歌舞伎町某焼肉屋『超絶クリーミー・ホルモン』の味にも似ていました。 タイトルからしてなんとなく伝わるかもしれませんが、シリアスな内容ではありながら絶妙なヒューモーを散りばめた温かみのある文体で包み込んだ、とってもイェイ・イェイなムードの素敵な本なんです。 時々冷水をあびせられるのも良し。 さて、この本には冒頭部いくつかの設問による「スパイ適性テスト」なるものがあり、折角だから正直に答えてみたところ、『最もスパイに適したタイプ』 の中に入っちゃいました。 このテストは例えば 「恋人が浮気をしている、とピンと来ました。 さて、どうやって証拠をつかみますか?」 なんてゆ設問に4択から答えるというもので、その4つの答えのうち 最も「スパイに不向き」なものには0点 ~~ 最も「スパイにふさわしい」ものには25点と、その「スパイ度」 に応じて点数が高くなっています。 ではこのテストで満点を取れば最もスパイ向きなのでしょうか? いいえ、このテストでは満点の9割2分以上を取ると 『行き過ぎにより、スパイには不向き』 と診断されます。 また8割2分を下回ってもやはりNG。 私の場合は8割6分とかなり直球ド真ん中に近い所をヒットしました。いいだろう。うひひひ 読み進めて行くと途中で唐突に「異性との関わり」「賄賂(わいろ)攻撃」についてのスパイ適正度テストなるものが登場し、こちらもやってみましたがその結果「異性」はスパイ適性度最高。 ところが「賄賂」の方はなんと『行き過ぎ、スパイに不向き』と出てしまいました!! 「異性」の話が出ましたが、ある理由により、スパイに「同性愛者」は非常に不向きなんだそうです。 さて言うだけ野暮ですが、ミステリの世界と非常に親和性の高い、素敵な本です。 生きる指針が欲しい時、何かの初心に帰りたい時、読んでみては如何ですか。 |