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ミステリの祭典

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久生十蘭短篇選
川崎賢子編 岩波文庫

作家 久生十蘭
出版日2009年05月
平均点9.00点
書評数1人

No.1 9点 斎藤警部
(2020/11/18 05:30登録)
戦後作が大半を占める絶景アンソロジー。天使と悪魔の配置具合に感慨あり。

黄泉にて  ■ しみじみ、嗚呼しみじみ。緩から始める最高のスターター。
予言    ■ サスペンスと、幻想と、実ぅに好みの最後の一筆。
鶴鍋    ■ 洒脱の中に情濃密、二度読み必至。
無月物語  ■ 残虐奇想と爽快余韻が何度も行き交う、翻案テイストが宿る歴史怪篇。  
黒い手帳  ■ 巴里在住の日本人達。緩急ある貧困、賭博への憧れ、生命の遣り取り、急襲する恋愛と友情の物語。ここにカッチリしたミステリ結末が無くて何の不満があろう。
泡沫の記  ■ 鷗外の獨逸日記引用に始まり、狂王と侍医の急な死を巡る歴史推理に、美しい奇想描写が闖入する、詩的随想。
白雪姫   ■ シャモニー氷河にて、愛憎紛う男女を襲うサスペンス譚、裁判、優しい涙をさそう後日談。後を引く。
蝶の絵   ■ 南洋から復員した名家の友人は、容貌は異様なまでに以前通りだったが、性格や行動が大いに変わってしまったようだ。その闇の謎が明かされる。
雪間    ■ 快くもどかしい、婚外恋愛と〇〇〇〇〇〇〇〇犯罪の物語。終結部のスリルが熱い。最後の台詞がまたもどかしい。
春の山   ■ 闘鶏花試合がクライマックスに来る熱い掌編。一大事とは何か。
猪鹿蝶   ■ 一方的な電話のお喋りで構成された、女から女への復讐劇(聴き手は第三の女)、迷走の末爆裂する奇妙な味!! こりゃ翻弄されたわぁ。で、何で最後にこんなシンミリさせらなアカんの。。 
ユモレスク ■ あまりに切なくあまりにトリッキーな味わい濃縮の一篇。親離れの良過ぎる息子と、子想いのあまりに深い母、母の姪。東京とパリ。ラストの台詞は、そのままの意味と取りたいが。。10点。
母子像   ■ ユモレスクの直後にこれを置くなんて。。。。無限に悲しい物語、強烈無比の掌篇。冒頭から謎の騒めきとちぐはぐ感を噴霧しているのが凄い演出ですね。10点。
復活祭   ■ 沼が深過ぎるよ。。。。。。。。これを母子像の次に置くってんだからなぁ。横顔の描写比喩に凄えのがあったなあ。最後数ページの痛みを伴う温かな激動が美しいなあ。
だが(?)これは断じてハッピーエンド、という言い方で似合わなきゃブライトエンドだよなあ。 この題名こそは、そのもの真っ直ぐだ。 読み終わり、すぐ、七年後に読み返したくなると自分に予言。10点。
春雪    ■ プリンスのファンなら泣かずにいられぬオープニング。終戦間際に病で若死にした女性の、心の謎の、明かされ方がミソ。美しきアンコールピース。

ミステリファンの琴線に玄妙な触れ方をするこの人の小説はやはり、いいです。

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