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ミステリの祭典

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僕たちの好きな京極夏彦
別冊宝島編集部編

作家 評論・エッセイ
出版日2004年09月
平均点6.00点
書評数1人

No.1 6点 メルカトル
(2020/11/03 22:39登録)
この世には不思議なことなど何もないのだよ―言葉と精神の怪を解く稀代の座敷探偵・中禅寺秋彦、掴みどころのない気ままな幻視探偵・榎木津礼二郎。前代未聞のキャラクターが大活躍する“京極堂シリーズ”から妖怪小説、江戸古典怪談のリメイク、京極版百物語“巷説百物語シリーズ”まで、妖艶なる京極作品の仕掛け、登場人物、キーワードを徹底解剖した、ファン待望のパーフェクトガイド。
『BOOK』データベースより。

『鵺の碑』が近日刊行との噂を前に一度読んでおこうと思った一冊。
京極堂シリーズ『姑獲鳥の夏』から『陰摩羅鬼の瑕』までと、百鬼夜行シリーズ、巷説百物語シリーズ、『ルー=ガルー』『どすこい(仮)』『嗤う伊右衛門』に至るまで当時としてはほぼすべての京極作品を網羅したガイドブックとして最適です。何より作品ごとに解説、評論がなされているので、混乱することなく読み進められます。しかも京極堂シリーズに関しては本作の中禅寺秋彦、榎木津礼二郎と銘打って、それぞれの活躍や見どころ等が書かれていてファンとしては嬉しいところでしょう。総勢9名の論客たちによる論戦が繰り広げられていますが、流石に京極作品とは切っても切れない宗教に関しての蘊蓄、特に真言立川流には閉口しました。前に書評した『京極夏彦の世界』でも登場した斎藤環が『狂骨の夢』における精神分析の齟齬を指摘して、文庫化に際して京極夏彦がそこを改変している点を自慢しているには少し驚きました。本当なのだろうか。

冒頭で水木しげるのインタビューが掲載されていますが、ここが一番感心しました。水木氏が飄々と京極に対する人間性を語るのは微笑ましくもあり、二人の絆が如何に強い物だったかを伺わせます。
中にはあからさまなネタバレを含んでいるものもありますので、一応注意が必要です。出来れば上記の作品全て読破してから挑むのが吉かと思いますね。しかし、タイトルの割には内容はしっかりとしたものであり、優れた評論本ではないでしょうか。

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