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ミステリの祭典

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未来からの脱出

作家 小林泰三
出版日2020年08月
平均点7.00点
書評数2人

No.2 7点 ROM大臣
(2024/07/29 14:19登録)
主人公のサブロウは、ある施設でいつからか暮らしている百歳ぐらいの老人。その施設には彼と同じような老人が大勢入居しており、職員たちはなぜか、どこの国のものでもない言語をしゃべる。数日前の出来事が思い出せないほど記憶力が覚束ない状態のサブロウは、自身の日記帳に何者かの奇妙なメッセージを発見する。それは、施設からの脱出を唆すような内容だった。
サブロウは施設の入居者の中から、情報収集担当のエリザ、戦略担当のドック、技術担当のミッチという仲間を集め、職員たちに悟られぬよう用心深く脱走計画を練る。といっても、サブロウの記憶力が不確かである以上、仲間とのコミュニケーション自体が一苦労。
物語は思ったよりもスピーディーに進行し、まさかのタイミングで起こる密室殺人、終盤の目まぐるしいどんでん返しなど、ミステリとしての読みどころが多い一冊となっている。

No.1 7点 虫暮部
(2020/11/03 11:42登録)
 枠組みとしてはSFだが、なかなかミステリ味も濃い一冊。嫌がらせのように使われるロジック、記憶の錯綜による混乱、グロテスクな変形と、正直いつものネタが満載ではある。ただそもそもが特殊な作風だから、それをマンネリズムだと批判するのは違う気がする。寧ろ作者はこのスタイルをどこまでも研ぎ澄ます職人の道を極めようとしているのだな。

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