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ミステリの祭典

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五年後に

作家 咲沢くれは
出版日2020年05月
平均点5.00点
書評数1人

No.1 5点 猫サーカス
(2020/10/30 18:02登録)
第40回小説推理新人賞を受賞した表題作をタイトルにした作品集。教師の夫が女生徒の犯罪に巻き込まれる「五年後に」、帰宅しない息子を待つ老婦人と対話する「渡船場で」、末期がんの母親との思い出をたどる「眠るひと」、いじめ問題を見据える「教室の匂いのなかで」の4編が収録されている。いずれも異なる中学校教師を主人公にして、学校と生徒と教師自身の家族の問題を丁寧に解き明かしている。「小説は人の傷口を素手で触る仕事なんだと、改めて思った」(桜木紫乃選考委員)と評されたひそやかな悪意のせめぎ合いを捉える表題作もいいけれど、それ以上に優れているのが次の2作。複雑な家族関係に悩む生徒と自身の問題を温かくみつめる「渡船場で」と母親の思いがけない人生を目の当たりにして生きることの悲しみと喜びを切々と描き切った「眠るひと」。身近にいる家族の思いを救い上げて静かな感動を呼ぶ。ひときわ印象深い。

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