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ミステリの祭典

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平井骸惚此中ニ有リ 其弐
平井骸惚此中ニ有リ

作家 田代裕彦
出版日2004年04月
平均点5.00点
書評数1人

No.1 5点 メルカトル
(2020/10/16 22:53登録)
「大丈夫、すぐに小生が解決してみせるからね」那須の一等地にある、山深い洋館のホテル。窓の外を眺める河上くんの目に飛び込んできた異様な光景―轟く雷鳴に照らし出されたのは、露台から吊された華族・日下家跡取りの変わり果てた姿。怯える涼嬢と撥子嬢に、勢い込んで告げる河上くんでありましたが…。担当編集者、緋音嬢の誘いにより、真夏の帝都を逃れ避暑と洒落込む、探偵作家・平井骸惚一家と弟子の河上くんたち。しかし、ただ安穏と避暑などと、世の中そうは甘くはなく…。―私は命を狙はれてゐる 緋音嬢が、骸惚先生と河上くんに手渡したのは、日下家長男である、直明氏からの封書でした。折からの嵐により、外部との連絡手段を絶たれた洋館。雷鳴と豪雨に紛れるように、一人、また一人と消されていく日下家の跡取りたち―。絡む華族四兄弟の思惑に、探偵作家・平井骸惚と河上くんが挑む、本格推理譚第二弾。
『BOOK』データベースより。

何ですか、この文体は。大正の時代の話なのに会話文はむしろ現代的なのはいささかの問題もありません。問題は地の文、~して。~で。が文章の末尾に来ていて、物凄く違和感を覚えます。
『BOOK』データベースではなんだか凄そうな印象を受けますが、大したことはありません。爵位の継承を巡る連続殺人事件で、ミステリとしては至極平均的で特筆すべき点はありません。アリバイトリックや密室に関して言えばあっさりし過ぎな感が強く、かなりのご都合主義や偶然性に頼った事件の連続なのは間違いないでしょう。キャラ小説としてはまあこれも普通で、さして個性的でクセの強い人物は登場しません。河上君と涼嬢の遣り取りなどは微笑ましく、その辺りが若年層に受けているのかも知れませんが。尚、男尊女卑の風潮が未だ強く残る大正時代の雰囲気は全くありません。

それにしても、本シリーズが何作も世に出ているのには驚きを隠せません。こんな平凡な作品が第二弾で、その後も続いていることは私などにしてみれば何だかなあと思えてなりません。
しかし後味は悪くありませんでした。ちょっと爽やかな余韻を残しているところで+1点。評点はやや甘め、いや結構甘めです。

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