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ミステリの祭典

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現代語訳 怪談「諸国百物語」

作家 アンソロジー(国内編集者)
出版日2020年06月
平均点6.00点
書評数1人

No.1 6点 小原庄助
(2020/10/08 08:51登録)
江戸時代、「百物語」と呼ばれる怪談会が流行した。夜に灯心を100本ともし、恐怖譚が語られるごとに、1本ずつ消していく。全てが消された時に怪奇現象が起こるとされ、「御伽百物語」や「太平百物語」など相次いで刊行された。
参加者が集まる部屋と隣の部屋は無灯、一番奥まった部屋に灯心を備え、1話終えたら手探りで灯心が置かれた部屋へ...。中世の御伽衆に由来するとも武家の肝試しに始まったとも伝えるが、訳者によると本書はその嚆矢とされる「諸国百物語」の「おそらく初めて全話を通しての現代語訳」だという。
北は奥州仙台から南は九州筑前・豊後まで全国各地の怪奇話を収める。幽霊や蛇、執心にまつわる話が多いが、恐ろしい内容ばかりではなく、おかしみのある逸話や霊を供養して幸福な結末を迎えるものもあり、物語はバリエーションに富む。
抑圧され黙殺されてきた存在や悲痛な心情を異形のものとして捉え直し、そして語る。緩やかに社会へと還流させようとする試みも透けて見える。

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