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ミステリの祭典

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鏡の顔

作家 大沢在昌
出版日2009年02月
平均点5.00点
書評数1人

No.1 5点 E-BANKER
(2020/08/24 19:55登録)
『傑作ハードボイルド小説集』と銘打たれた本作。
鮫島刑事やジョーカー、佐久間公など、作者が生み出したヒーロー(?)たちが共演する豪華作品集。
単行本は2009年の発表。今回は講談社文庫版で読了。

①「夜風」=短編集「鮫島の貌」の収録作であり既読。ごくごく短い作品だが、鮫島VS悪徳刑事というシリーズ中でもよくお目にかかる構図。”癒着”って嫌ねぇ・・・
②「年期」、③「Saturday」、④「Wednesday」、⑤「ひとり」=ショート・ショートというべき分量。長い物語の一部分を切り取りました、とでも言うべきか。あまり印象には残らず。洒落た読み心地ではある。
⑥「二杯目のジンフィズ」=俺も好きだよ、ジンフィズ!
⑦「空気のように」=登場する女性の「K」って、この前読了した「Kの日々」に出てくる「K」のこと? 単身極道の事務所に飛び込んだ主人公をKは救えるのかって感じ。
⑧「ゆきどまりの女」=こんな女怖ぇー。ヤリ終えた瞬間にズドン・・・だもんな。でも最後は報いを受けることに。
⑨「冬の保安官」=元敏腕刑事が別荘地の保安官に。昔の異名が”ハマのシェリフ”・・・名がダサい!
⑩「ダックのルール」=いかにも大沢ハードボイルド、っていう雰囲気の舞台設定。佐久間公とダックと呼ばれる日系ハーフの大男。彼には日本で取り返さなければならないものがあった。巻き込まれただけの佐久間は、いつの間にかダックを助けることに・・・
⑪「ジョーカーと革命」=作者の人気シリーズのひとつの主役”ジョーカー”。今回の相手はかなり手強い。だって、カクテルグラスに手榴弾入れるんだぜ! 爆発するよ、そりゃぁー
⑫「鏡の顔」=結局最後まで名前さえ語られなかった殺し屋の男。彼の「目」に魅せられたフォトグラファー沢原は彼の後を追うことに。最後は・・・切なさが残る。

以上12編。
短編だから、読者としては語られなかった行間を楽しむことが求められる。
そういう意味ではまぁ合格点かなというレベル。
作者が創造した男たちは、鮫島にしろ、ジョーカーにしろ、佐久間公にしろ、「強さ」と「優しや」そして「弱さ」を持ち合わせている。それが読者に共感や深い余韻を残させることに成功しているのだろう。

ただ、やっぱりこってりした長編の方が作者の良さがより発揮できるのは間違いない。
作者が年齢を重ねるごとに、作中の主人公たちもやや足腰が重くなっている感はあるので(やむを得ないかな)、無理かもしれないけど新鮮&鮮烈な新作が読みたいものだ。

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